値上げラッシュ
天下一品。俗にいう「天一」は、ラーメン好きなら一度は食べたことがあるでだろう、全国的にも有名なチェーン店。「こってり」という名が通り名として浸透しているほどの、どろどろの濃厚な鳥骨スープが唯一無二なこってりラーメンは、全国のおすすめラーメンチェーンの上位にランクインする人気ラーメンでもある。
天下一品の発祥は京都。京都といえば、ラーメンに関しても京料理に代表されるように薄味というイメージがある。出汁がきいた透き通ったスープに細麺、そんで、BGMには琴の音が流れるみたいな、いわゆる「京風ラーメン」。実際、ひと昔前の東京にもそういう類の店はあったが、現実の京都ラーメンはどちらかといえば濃い味が主流。老舗でいうと「第一旭」や、そのお隣の「新福菜館」などは、見た目も濃厚な醤油系スープだし、鶏ガラを煮込んだスープの「天天有」、背脂をふんだんに使った「ますたに」など、どれもが味が濃系のスープが売り。新規店においても、だいたいが濃い味を前面に打ち出している店が多い。
なかでも、独特のどろっとしたスープが印象的なのが「天下一品」。1971年に屋台からスタートし、店主が味の開発を進めたのち、1975年に現在の京都本店の地に天下一品として創業。今や全国に222店舗も構えるラーメンチェーンになり、全国にこってり味の固定ファンも多い。じっくり煮込んだ鶏ガラをベースに野菜などを加えたスープは濃厚で、雑に言えば「どろどろ」。麺を持ち上げるとスープが絡みつくくらいで、スープを飲むというよりは食べるといったほうが適切かというくらい。その味は見た目通りの「こってり」だ。
学生のころ初めて天下一品を食べたときは、ラーメンといえば中華そばといった中華系の醤油味がほとんど。当時、珍しいラーメンといえば札幌ラーメンくらいしかなかったこともあってか、今までにないラーメンの味に感激し、京都に住んでいたころは、ラーメンといえば天下一品というくらいの、天一好きになってしまっていた。そんなわけで、東京に出てきてからも、けっこうな頻度で天一に通っていたわけだが、その後に続々と新しい味のラーメン店が出現して、いつしか一大ラーメンブームが到来。いつの間にか天一にも足が遠のいていった。
そんなつい先日、呑んだあとにたまたま前を通りかかった天下一品。小腹が空いていたこともあって、つい引き込まれてしまい、着席するかしないかでメニューも見ずに「こってり」宣言。何年ぶりだろうか? 確かコロナ禍が始まる前以来だっけ?
天下一品には直営店とフランチャイズがあるが、大半は後者でこの店もそのようす。セントラルキッチン方式なので味は同じかと思いきや、スープの原液を戻す行程が店それぞれあるようで、店舗によって味が異なるというのが通の見解だ。うん。この店、基本的には天一の味だけど、味が塩っ辛くてイマイチかな。ま、久しぶりだからと思いつつ完食。会計をとレシートを見ると、940円。え? 何もトッピングしていないはずだが、よく見るとラーメン単体の値段。値上がり? それにしても、高っ!
前に食べたときは確か700円台だった記憶がある。その時も一杯600円台の記憶があったので値上げかと思ったが、今回の940円はさすがに割高感が半端ない。もはや、高級ラーメン? 天一は今までも頻繁に値上げがあったようだが、900円以上は許容範囲外。今後は、よっぽど酩酊していない限り無理かなぁ。さらば、天一よ。ま、そうは言っても忘れたころにまた食べちゃうんだろうけれど、その時は1000円を超えているかもしれない。
そんなこんなで世の中は値上げラッシュ。光熱費から食料、生活必需品までありとあらゆる値段がどんどん上がってきている。こと、温泉に関しては、まだまだ値上げラッシュの波は押し寄せてきていないように感じるが、燃料費、食材費、リネンなどの雑費など、温泉はダイレクトに値上げの影響を受ける業種でもあるだけに、今後は入浴料を始め宿泊費も値上げの一途をたどるのは目に見えている。交通費やガソリン代のアップも想定できるから、温泉なんて気軽にほいほい行ける時代ではなくなっちゃたりして。
新宿の昭和チックな飲み屋街「思い出横町」が、近ごろ訪日外国人の占拠状態になっているように、温泉に行っても客はインバウンド客だらけで、ここは日本? なんてことに・・
(温泉呑んべえ)