調味料もかけ流し
近ごろ醤油や塩は、ミニ容器に入れて携帯している。スシローぺろぺろ事件を気にしてのことではなく、たんに本物の調味料を使いたいからだ。
醤油や味噌などの発酵食品は、基本的に自然熟成させてつくられる。例えば、醤油は大豆と小麦などに麹菌と塩を加え発酵させて、少なくとも1年以上かけて熟成させるが、手間も時間もかかるためその分価格も高くなる。
かたや、スーパーなどに置いてある安価な醤油は、大量生産として工場で製造され、熟成させる手間をはぶくために人工アルコールを加えたものがほとんど。さらに低価格なものには、旨味を増すためにアミノ酸等の化学調味料を加えたものさえある。
大衆向けの呑み屋や食堂に置いてある醤油は大抵はこの手のもので、言ってしまえば醤油ではなく、醤油に似せた調味料にすぎない。本物と偽物の醤油には、それほど味に天と地ほどの差がある。
呑み屋で刺身で一杯なんて至福のひと時ではあるが、醤油が違うだけでお手ごろ価格の刺身でも格段と美味しくなる。旨いお酒を楽しむためには、もはや携帯醤油は手放せなくなった。
それは何も醤油に限ったことではなく、塩や味噌も安価なものはすべてなんちゃって調味料。
自然塩にたいして、精製塩には炭酸マグネシウムが混合されているし、旨みを補うために化学調味料や添加物が使用されているものも多い。味噌においても、長期熟成させる天然醸造にたいして、安価な味噌は短期で人工的に発酵させる速醸法でつくられたものに、化学調味料を加えて1ヶ月もかからず製造されている。
温泉で例えるなら、本物の調味料は源泉そのもの、なんちゃって調味料は循環塩素入りということか。
まあ、農薬まみれの野菜や薬品漬けの肉や養殖魚、ぱっと見どんな薬品か添加されているかわからない化学調味料まみれの食品ばかりで、栄養より毒のほうが多いんじゃないかと思える食べ物だらけの世の中。自宅では気にできても、外食ではどうしようもない。
せめて調味料くらい、本物の源泉を探求するごとく、体を外から包み込んでくれるお湯にこだわるように、体の中にも源泉かけ流しを満喫したい。
(温泉呑んべえ)