夢想湯想
 

 部屋付きの源泉かけ流し、最高の癒しである。

 専用風呂付きの部屋にリーズナブルに泊まれる宿も、近ごろ増えてきている。そんなとある宿で、ひとりでゆったり入れるつぼ湯の湯船に、まざりっけなしの源泉を注ぐ。泉温は42度程度。それをしばらく放置して好みの温度に下げる。その間は大浴場にでも行って、戻ってくると40度弱のええ塩梅になっている。

 ざぶんと入ると湯が流れ、とりあえず肩まで。開けた窓からは遠くに緑のまぶしい山々、眼下には川が流れ、何人かの釣り人の姿がちらほら。聞こえてくるのは川のせせらぎと鳥の声。

 何も考えずに湯のなかでゆらゆらといきたいところだが、まるで湯に漂う湯の花のように、次から次へと頭の中に雑念が浮かんでは消え、浮かんでは消え。そうこうしていると、やがて五月蝿かった心の声も穏やかになり、気がつけば1時間くらいの時が流れて、手の指もふやけてしわしわになっている。


 
 一旦、湯から出てワインなどを開けてみる。部屋の冷蔵庫は自由に使えるタイプで、チェックインすぐに入れておいた酒たちはほどよく冷えていて、湯上りの喉を癒してくれる。温泉好きの酒好きにとっては、これこそが至福のとき。

 これは現実なのか、はたまた妄想なのか? 

 面倒なことに、温泉好きにとってはしばらく温泉に入っていないと、生きているいる実感が乏しくなる時がある。
 人の脳は現実と夢との区別がつかないというが、未来は想像、過去は記憶。確かなのは今のこの瞬間だけ。そう、湯につかっている瞬間は、いわば今でありこの世界との接点だ。

 さて、この世界と接続するために、どこの温泉に出かけようか・・・

(温泉呑んべえ)
2023.05.20 15:58 | pmlink.png 固定リンク | folder.png 温泉旅 | com.gif コメント (0)

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