素通り絶品ラーメン
 茨城県水戸市から会津若松市に至る国道118号線は、二岐温泉や岩瀬湯本温泉に向かうときに通る、主要幹線道路だ。国道から二岐温泉に向かう分岐から西に車で10分ほどの場所に、ポツンと1軒の食堂がある。それが「羽鳥食堂」。



 ほとんどの人が素通りをし、それが食堂があることもわからないほどの地味な佇まい。そんな空気のような食堂、でもそういう地味さがたまらない人種にとっては、目をとめざるをえない雰囲気を醸し出している。
 二岐温泉に行く道で見つけ、帰りには必ず立ち寄ろうと心に決めた。今、食事すると宿での夕食に差し支えるので、後ろ髪をひかれる思いで「大丸あすなろ荘」へ向う。明日、やってるかな? やってるといいのだが・・ そんな思いを胸に温泉につかるのもどうかと思うが、温泉旅の醍醐味はなにも湯だけではない。こういう自分なりのオプションが格別でもあるのだ。



 翌日、チェックアウトを済ませ帰路につく。前方には赤い幟が見え、車を店の手前の路肩に停める。時間は午前10時半をすぎたあたり。ちょうど店主らしき人が出てきて、暖簾をかけた。やった! 店内はそう広くはないが、四人がけのテーブルが何卓か並んでいて、安普請だけど掃除もわりと行き届いている。食堂メニューがいくつか並んでいるけれど、店主はラーメンならできますとポツリ。



 ラーメンで十分だ。なにせ今朝は宿でそこそこ豪勢な朝食をとってまだ間もない。お腹はまだ空いていいるわけでもないが、どうしてもここで食事がしたかったので、ラーメンくらいしか無理かもしれない。店内の奥には薪ストーブが鎮座してて、そのうえに鍋があり、どうやらここでラーメーンスープを温めているようだ。



 ほどなく提供されたラーメンは、いたってシンプル。でも、見るからによくある食堂の醤油ラーメンではない。スープを口に含むと濃厚な味わい。豚こつ? いや、それほど臭みはないが、店主に聞くと鳥こつ醤油という。なるほど、すっきりとしたうえに濃い味わいが中太ちじれ麺にからんで、これは旨い。まさか、こんなところでこんな旨いラーメンに出くわすとは思わなかった。



 ごちさそうさまでした。店主とひと時世間話をしておいとま。食べログにも載ってない店だけど、Googleマップの口コミにはこんなコメントが残っていた。「日本一まずい。買ってきた喜多方ラーメンに魚醤油を使ったというラーメン」。そうなのか? 喜多方ラーメンだと醤油系なんだけど?? 味覚は人それぞれだが、こうも感想が違うとは。それとも自分がバカ舌なのか・・・ まあ、仮にそうだったとしても自分が美味しいと思えたなら、それはそれでいい。なにせ、こういったジミ系の食堂が大好きなのだから。

(温泉呑んべえ)

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